WORKS NO. 851 『未来を守る殺し屋』
その少女を殺せば、未来は闇に閉ざされる。
残酷な殺し屋ガルドが受けた依頼は、未来を見る力を持つ少女ミラの抹殺だった。
無数の命を奪い、泣き声にも命乞いにも心を動かさなかったガルドは、奇妙な遊園都市の廃墟でミラを追い詰める。銃口を向けた瞬間、少女は怯えることなく言った。
「あなたは私を殺さない。三分後、私を守るために撃たれるから」
次の瞬間、依頼主が放った別の殺し屋たちが現れた。ガルドは反射的にミラをかばい、予言どおり肩を撃ち抜かれる。自分でも理解できない行動だった。
二人は、空に浮かぶ城や機械仕掛けの怪物がひしめく都市を逃げ続けた。ミラには数秒後から数十年後まで、無数に枝分かれする未来が見えていた。しかし、彼女がどの道を選んでも、最後には黒い仮面の何者かに命を奪われる。
「どうして私を守るの」
「お前を殺すのは俺だった。それを他人に奪われるのが気に入らないだけだ」
そう答えながら、ガルドは次第に変わっていった。少女に食事を与え、眠れない夜には扉の前に座り、悪夢から目覚めれば不器用に頭を撫でた。やがて殺し屋を辞め、正式なボディガードとしてミラを守る道を選ぶ。そして身寄りのない彼女を養子に迎えた。
初めて「お父さん」と呼ばれた夜、ガルドは誰にも見られない場所で泣いた。
だが、穏やかな日々は長く続かなかった。ミラが最も恐れていた黒い仮面の男が、巨大な機械兵団を率いて現れた。その正体は、ガルドが過去に殺した人々の記憶から生まれた人工生命だった。憎しみを養分に成長した怪物は、ガルドの罪をすべて知っていた。
「お前に父親を名乗る資格はない」
怪物の言葉に、ガルドは銃を捨てた。過去は消せない。だが、未来まで過去の奴隷になる必要はない。
WORKS No.851

