WORKS No. 808 地球を見守る女神

WORKS No. 808 地球を見守る女神

WORKS NO. 808  地球を見守る女神

人類が滅び、愛の伝道師団も消滅した地上を、生殖機能を持たない女性リーダーは、ただ一人で彷徨い続けた。
彼女もやがて肉体を失った。しかし、愛の核兵器を完成させたとき、その生命情報は地球の生態系と結びつき、意識だけは永遠に生き続ける存在となっていた。
我が子を抱けなかった彼女は、残された科学で生命を創ろうとした。だが、異形の生命は環境へ適応できず、何度も滅亡を繰り返した。
やがて彼女は悟る。生命は理想どおりにつくるものではない、と。
風は大地を削り、雨は海へ命の種を運び、微小な生命は偶然と淘汰を重ねながら進化していく。その営みを、彼女は永遠にも思える時の中で、何も支配せず静かに見守り続けた。
そして幾度もの滅亡と誕生の果て、人間とは異なる姿を持ちながらも、言葉を交わし、思いやり、未来を夢見る新たな人類が誕生した。
生命とは、不完全なまま生まれ、失敗と別れを重ねながら、自ら未来を選び取る存在だった。
彼女は大気、海、森へと広がり、「地球を見守る女神」となった。
さらに地球の奥深くで、滅びた命を次の誕生へ導く「魂の髑髏の天使」と出会う。それは死ではなく、命を循環させる地球そのものの魂だった。
女神は天使と結ばれ、新たな人類を我が子として見守ることを誓う。
地球が消える、その最後の瞬間まで。
永遠の命は罰ではなかった。
誕生を見守る女神と、死を抱きしめる髑髏の天使。その二つが結ばれている限り、地球の命の物語は永遠に巡り続ける。
手塚治虫先生 火の鳥参照

WORKS No.808