WORKS No. 622 残響の温度

WORKS No. 622 残響の温度

WORKS NO. 622 残響の温度

笑い合い
過ぎし時間の
ぬくもりが
今は激情
震えに変わる

あの時間は確かに、穏やかだった。
他愛もない会話、重ならないはずの偶然、同じ温度で笑えた瞬間。
だが、その記憶があるからこそ、
いま目の前にある感情は、ただの怒りでは済まない。
声の強さ、視線の揺れ、言葉の端に滲むもの。
それらは表面の激情ではなく、
「かつて大切だったもの」が形を変えた痕跡でもある。
楽しかった時間は、消えたのではない。
ただ、同じ形で存在できなくなっただけだ。
だから人は、理解できないまま距離を取るか、
あるいは、何かを察しながらも言葉にしない。
激情とは、単なる破壊ではない。
それは関係の深さが、形を変えて現れた現象でもある。
穏やかだった記憶と、激しく揺れる現在。
その両方を抱えたまま、人は次の距離を選んでいく。

WORKS No.622