WORKS NO. 853 『鬼の王と、嘘をつけない少女』
空に色とりどりの惑星が浮かび、雲の上を奇妙な生き物たちが泳ぐ異界――万華郷。
そこを支配していたのは、巨大な角と赤い肌を持つ鬼の王・紅牙だった。人間の世界では、彼は子供をさらい、災いを呼ぶ恐ろしい怪物として語り継がれていた。
ある日、学校から帰る途中だった少女・澪は、古びた神社の鳥居をくぐり、誤って万華郷へ迷い込んでしまう。
澪がそこで目にしたのは、恐ろしい鬼ではなかった。
紅牙は傷ついた空飛ぶ獣を抱き上げ、薬草を塗り、怯える小さな魔物たちに食料を分け与えていた。しかし、澪に気づいた瞬間、彼は恐ろしい顔を作り、地面を揺らす声で叫んだ。
「人間よ、命が惜しければ立ち去れ!」
ところが澪は逃げなかった。紅牙の目に、深い悲しみが隠されていることに気づいたからだ。
「あなたは、本当は優しいのに、どうして怖いふりをするの」
その一言で、万華郷の空に亀裂が走った。
澪には、生まれつき嘘を見抜く力があった。そして彼女が真実を口にすると、隠されていたものが姿を現す。紅牙の胸から黒い鎖が浮かび上がり、その先は空にそびえる黄金の城へと続いていた。
かつて人間と鬼は、二つの世界を行き来し、共に暮らしていた。しかし人間の王は万華郷の宝を独占するため、紅牙に呪いをかけた。
人間を愛すれば、その人間に災いが降りかかる。
紅牙は大切な者を守るため、自ら悪者となり、何百年もの間、人間を遠ざけ続けていたのだ。
澪を元の世界へ帰そうとしたその夜、黄金の城から仮面の兵士たちが押し寄せた。狙いは、嘘を見抜く澪の力だった。
紅牙は巨大な身体で少女をかばい、無数の矢を受けた。澪を抱えて浮遊する惑星を飛び越え、歯をむく空中生物をかわし、崩れ落ちる虹の橋を渡�
WORKS No.853

