WORKS NO. 854 『永遠を捨てた恋人たち』
夢の世界には、時間の終わりがなかった。
空には色鮮やかな惑星が浮かび、機械仕掛けの塔は雲よりも高く伸びていた。そこでは花が枯れることも、人が老いることもない。誰もが永遠の命を持ち、昨日と同じ明日を繰り返していた。
少年クロノの身体は、精巧な金属と無数の歯車で造られていた。胸の奥にある永久機関が動き続ける限り、彼は傷ついても修復され、何千年たっても同じ姿のままだった。
しかし、永遠に生きられるはずの彼は、生きている実感を知らなかった。
ある日、現実の世界から一人の少女リリアが迷い込んできた。彼女は眠っている間だけ夢の世界を訪れ、目覚めると再び現実へ戻っていった。
夢の中では、リリアも老いることがない。二人は空飛ぶ列車に乗り、虹色の砂漠を越え、星の実がなる森を旅した。何百年にも感じられる時間を共に過ごし、笑い合い、少しずつ互いを大切に思うようになった。
だが、クロノには分かっていた。
リリアが現実で過ごす時間は止まっていない。夢の中で永遠を生きていても、生身の身体には限りがある。いつか彼女は眠りから戻れなくなり、二度と夢の世界へ来られなくなる。
クロノは夢の管理者に願った。
「僕を現実の世界へ行かせてほしい」
管理者は冷たく告げた。
「現実の大地に立てば、永久機関は失われる。金属の身体は血の通う肉体へ変わり、傷つけば痛み、病に倒れ、やがて老いて死ぬ。それでも行くのか」
永遠を捨てることは、クロノにとって死を選ぶことに等しかった。
迷っている間にも、夢の世界は崩れ始めた。未来の現実で起きた大災害によって、人々が夢を見るための装置が停止しようとしていたのだ。
空中都市は傾き、惑星は砕け、二人の思い出が次々と光の塵になって消えて�
WORKS No.854

