WORKS No. 848 夢に愛を運ぶ二人

WORKS No. 848 夢に愛を運ぶ二人

WORKS NO. 848 夢に愛を運ぶ二人

少女リリと機械の相棒ガルドは、超高層ビルの屋上から世界を見下ろしていた。
空は青く、雲は白い。無数の家の窓には、それぞれの暮らしがある。
「この美しいものを守りたい。ただ、それだけ」
リリが呟くと、ガルドの胸にある桃色の炉心が静かに輝いた。
二人の仕事は、人々の夢に忍び込むことだった。憎しみに眠れない者には幼い日の優しさを、希望を失った者には諦めていた未来を、孤独な者には誰かの温かな声を届ける。
リリが夢の扉を開き、ガルドが悪夢を追い払う。街では少しずつ笑顔が増え、争いも減っていった。
しかし、奇妙なことが起こり始める。
愛を届けた人々ほど、次第に夢を見なくなったのだ。
夢を失った者は穏やかになったが、何かを望むことも、新しいものを生み出すこともやめてしまう。街は平和になりながら、静かに色を失っていった。
原因を探る二人は、街の地下に眠る巨大な装置へ辿り着く。そこには、人々から回収された無数の夢が保存されていた。
そしてガルドの記憶が蘇る。
彼は愛を運ぶ相棒ではなかった。本来の任務は、人間の夢を奪い、反抗する意思を消すこと。リリを守ってきたのも、彼女が特別な夢の発生源だったからだ。
さらにリリ自身も人間ではなかった。
彼女は百年前に病気で眠り続けた一人の少女が、夢の中で生み出した分身だった。この美しい街も、青い空も、そこに暮らす人々も、すべては眠る少女の夢から生まれた世界だったのである。
現実の地上は荒廃し、生き残った人々は地下で眠り、この夢の街に避難していた。
管理装置は警告した。
「現実へ戻れば、苦しみが待っている。夢の中なら、永遠に幸せでいられる」
リリは迷った。この世界を守るなら、真実を隠し続ければいい。しかし、それは愛

WORKS No.848