WORKS No. 577 消される理想

WORKS No. 577 消される理想

WORKS NO. 577 消される理想

雑踏の
風に巻かれて
舞う理想
路上の影で
そっと消される

理想は、必ずしも強くはない。
むしろ多くの場合、それは脆く、揺らぎやすく、現実の中で形を保つことが難しい。
人が集まる場所には、無数の価値観と利害が交錯する。
その中で、純粋な理想は摩耗し、時に押し流され、居場所を失っていく。
雑踏とは単なる人の多さではない。
それは、無関心や競争、優先順位のぶつかり合いが渦巻く空間でもある。
理想が舞い上がる瞬間は確かにある。
希望として掲げられ、誰かの心を動かし、未来を照らそうとする。
しかし、その光は持続するとは限らない。
現実の重さ、環境の制約、そして人の疲れが、ゆっくりとそれを削っていく。
やがて理想は、目立たぬ場所へと追いやられる。
路上の影のように、誰にも気づかれず、静かに存在を薄めていく。
消されたのか、それとも消えていったのか、その境界は曖昧だ。
それでも、完全に無くなるわけではない。
踏まれたその痕跡は、別の誰かの中で、別の形として再び芽を出すことがある。
理想とは、消えるものではなく、繰り返し試されるものなのかもしれない。

WORKS No.577