WORKS No. 494 名を失う境界

WORKS No. 494 名を失う境界

WORKS NO. 494 名を失う境界

議論尽き
境目溶けて
価値も消え
白黒さえも
名を失う時

人は正しさを求め、議論で世界を切り分ける。
善悪や勝敗という分類は、理解するための道具だ。
だが議論が尽きた先で現れるのは勝者ではない。
境界が溶け、白黒の札が外れたとき、
残るのは静かな事実だけである。
善悪は宇宙の絶対ではなく、
人間が生きるために作った仮の枠にすぎない。
だから自分の正義を掲げる前に、
それが誰かを閉じ込めていないかを問わねばならない。
議論の目的は、相手を倒すことではない。
視野を広げることだ。
白黒が消えても思考をやめない姿勢こそが、
成熟した知性であり、
人を傷つけず前へ進む力になる。

WORKS No.494