WORKS NO. 860 【鋼鉄の爪と、少年の歩む道】
ネオンの光と路地裏の影が複雑に交差する街で、僕の青春は一度、終わったはずだった。
仮面をかぶった男たち街の闇を裏から牛耳る、悪名高き巨大組織のならず者たちに追い詰められた、あの日。
冷たいアスファルトの上に膝をつき、恐怖に震える僕の頭上へ、凶器が容赦なく振り下ろされようとしていた。視界が絶望に塗りつぶされかけた、まさにその瞬間。
暗闇を切り裂いたのは、鋭い機械の駆動音と、甲高い金属の爪音だった。
「シャアアアアッ!」
僕の目の前に躍り出たのは、かつて父さんが遺してくれた、大きな猫型のペットロボットだった。
普段は愛らしく喉を鳴らすだけの機体が、内部ギアの咆哮とともに、圧倒的な力をもつ護衛マシンへと変貌を遂げる。
巨大な鋼鉄の肉球が路地裏を揺らし、まばゆいセンサーの眼が仮面の集団を鋭く睨みつけた。一閃した鋼鉄の爪は暴漢たちの武器を粉砕し、恐怖におびえる僕を、その巨体で包み込むように守り抜いてくれた。
だが、それは長く苦しい葛藤の始まりにすぎなかった。
僕たちを襲った組織の影は街の深部にまで広がり、力なき人々のささやかな日常を奪い続けていた。
自分の身を守るだけで精いっぱいだった当時の僕は、己の無力さに打ちのめされ、何度も深い絶望の淵へと突き落とされた。
「僕が弱いままでいたら、大切なものなんて、何ひとつ守れない」
僕は悔し涙をぬぐい、猫型ロボットの頭を強く撫でた。
壊れかけた装甲を自らの手で修理し、ギアを磨き、切れた配線をつなぎ直す。傷ついた相棒を再び立ち上がらせるたびに、僕自身の心も少しずつ強くなっていった。
そして、大人への一歩を踏み出す決意を固めた僕たちは、小さな事務所を立ち上げた。
【理不尽におびえる弱者を救うための相談所】
当然、その道は険しかった。
大人たちの冷ややかな視線。幾度となく押し寄せる組織からの嫌がらせ。そして、誰かを守りきれず、悔し涙を流した夜。
何度も心が折れそうになった。
それでも、相棒のロボットが響かせる温かな駆動音と、助けを求める人々の眼差しが、僕の背中を押し続けてくれた。
数え切れないほどの苦難と紆余曲折を乗り越え、成長した僕たちは、ついに巨大組織の悪事を暴き、その支配を打ち破った。
そして、奪われていた街の平穏を取り戻すことに成功したのだ。
あの日、路地裏で泣いていた無力な少年は、もういない。
相棒とともに幾多の修羅場をくぐり抜け、僕は傷つきながらも、自分の足で立つ一人前の大人へと変わっていた。
絶望を知っているからこそ、誰かの希望になれる。
鋼鉄の爪は、人を傷つけるためではなく、大切な命と未来を守るためにある。
僕たちの戦いと青春は、これからもこの街で続いていく。

