WORKS No. 811 子どものための養子縁組

WORKS No. 811 子どものための養子縁組

WORKS NO. 811 子どものための養子縁組

養子縁組は、子どもを望む大人の願いだけをかなえる制度ではありません。さまざまな事情で実親と暮らせない子どもに、安心できる家庭と安定した法的な親子関係を保障するための制度です。判断の中心に置かれるのは、常に子どもの福祉と最善の利益です。
日本には普通養子縁組と特別養子縁組があります。普通養子縁組では実親との法的な親族関係が残り、養親との親子関係も生まれます。特別養子縁組では、原則として実親側との法的な親族関係が終了し、養親の実子と同様の法律関係が成立します。
特別養子縁組の養親は、配偶者のいる夫婦が共同でなることが原則です。原則25歳以上である必要がありますが、夫婦の一方が25歳以上なら、もう一方は20歳以上でも可能です。子どもは家庭裁判所へ申し立てる時点で原則15歳未満ですが、15歳になる前から継続して養育されていた場合などには例外があります。最終的には家庭裁判所が、子どもの利益のために必要かを審理します。
最初の公的な相談先は、居住地域を担当する児童相談所の里親・養子縁組担当窓口です。都道府県や政令指定都市のホームページで「児童相談所・里親相談」と検索するか、市区町村のこども家庭センターや子育て支援課に、担当する児童相談所を尋ねてください。地域の里親支援を自治体から委託されているフォスタリング機関でも、制度説明、研修、家庭訪問、登録後の相談などを受けられます。
民間を利用する場合は、都道府県などの許可を受けた養子縁組あっせん機関へ相談します。具体例には、社会福祉法人日本国際社会事業団、一般社団法人ベアホープ、認定法人フローレンス、法人ぽけっとなどがあります。ただし、活動地域、登録条件、費用、募集状況、成立後の支援内容は団体ごとに異なります。名称だけで判断せず、こども家庭庁の「民間の特別養子縁組あっせん事業者」一覧で、現在の許可状況を必ず確認してください。
手続きは、相談、説明会、研修、家庭訪問、適性の確認、登録、子どもとの交流、家庭への委託という流れで進みます。登録すれば必ず子どもを迎えられるわけではなく、希望する年齢や性別の子どもを選ぶ制度でもありません。その子どもにとって適切な家庭かどうかを基準に、慎重にマッチングされます。
特別養子縁組の成立には、原則6か月以上の監護状況を踏まえ、家庭裁判所の審判を受ける必要があります。その間、児童相談所やあっせん機関による訪問支援、家庭裁判所調査官による面接や調査などが行われます。審判が確定し、必要な戸籍手続きを終えることで、正式な親子関係が成立します。
重要なのが、子どもへ生い立ちを伝える真実告知、いわゆるテリングです。ある日突然告げるのではなく、幼い頃から成長段階に合った言葉で繰り返し伝えます。「あなたが家族になってくれてうれしい」と存在を肯定し、実親を悪く言ったり、事実を作り替えたりしてはいけません。子どもの怒り、悲しみ、疑問も否定せずに受け止めます。
テリング、出自情報の整理、ルーツ探しについては、子どもを委託した児童相談所、利用した民間あっせん機関、地域のフォスタリング機関へ相談できます。社会福祉法人日本国際社会事業団では、テリングやルーツ探しの支援も行っています。また、自治体の里親会、全国里親会、養親当事者の交流会では、同じ立場の家庭から体験を聞ける場合があります。子どもの強い不安や心の傷については、児童相談所の児童心理司、児童精神科、子どもの診療に詳しい公認心理師へ相談してください。
縁組成立はゴールではなく、家族としての生活の始まりです。支援機関とのつながりを切らず、子どもの発達、学校生活、思春期、出自への疑問に継続して向き合う必要があります。養子縁組は、理想の子どもを手に入れる制度ではありません。一人の人間の命、尊厳、過去、未来を受け止め、生涯にわたって親として責任を負う選択です。子供は犬、猫のペットではありません。

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