WORKS NO. 712 夜明けへ消えた君
幻の
ような口づけ
残したまま
君は夜明けへ
消えてしまった
忘れられない人というのは、長く一緒にいた人とは限らない。
ほんの短い時間でも、その瞬間が人生の奥深くに刻まれることがある。
触れた温もり。
重なった視線。
言葉にならなかった想い。
それらは時の流れとともに薄れていくはずなのに、なぜか心のどこかに残り続ける。
まるで夢を見ていたような夜だった。
確かに君はそこにいて、確かに笑っていた。
けれど夜明けが近づくにつれ、その存在は朝霧のように遠ざかっていった。
人は失ったものを美化すると言う。
それでも、あの瞬間だけは嘘ではなかったと思いたい。
叶わなかった未来よりも、確かに存在した一瞬を信じたい。
幻のような口づけは、もう二度と戻らない。
それでも心はときどき振り返る。
夜明けへ消えていった君の面影を。
WORKS No.712

