WORKS No. 679 窓を開ける朝に

WORKS No. 679 窓を開ける朝に

WORKS NO. 679 窓を開ける朝に

胸の奥
写真をめくる
指先で
遠い記憶へ
窓を開けたり

何枚かの写真を胸に思い浮かべながら、静かに窓を開ける。
朝の風は少し冷たく、遠い季節の匂いを運んでくる。
笑っていた横顔。
言葉にならなかった時間。
二度と戻らない景色。
写真はただの紙ではなく、閉じ込められた感情の欠片なのだと思う。
触れれば、その頃の空気や沈黙まで蘇ってくる。
窓の外では、今日という新しい時間が始まっている。
それなのに心だけは、まだ古い光の中を漂っている。
忘れたいわけではない。
ただ、美しいままでいてほしいだけなのかもしれない。
風に揺れるカーテンの音を聞きながら、
胸の奥で静かに写真をしまい込む。
そしてまた、何も言わずに空を見上げる。

WORKS No.679