WORKS No. 653 記憶の退色と再生

WORKS No. 653 記憶の退色と再生

WORKS NO. 653 記憶の退色と再生

薄れゆく
過去の景色が
胸に触れ
消えぬ痛みを
静かに和らぐ

時間の流れは、すべてを均一に奪うわけではない。
むしろ、強く刻まれた記憶ほど、形を変えながら残り続ける。
鮮明だった輪郭はやがて滲み、色は薄れ、
感情だけが静かに沈殿していく。
かつては鋭く突き刺さった痛みも、
時間とともにその鋭さを失い、
やがて触れられるものへと変わっていく。
完全に消えることはない。
だが、それはもはや「傷」そのものではなく、
自分を形作る一部として存在している。
色褪せていくという現象は、喪失ではなく変化だ。
記憶は消えるのではなく、
心が扱える形へと再構築されていく。
その過程の中で、人はようやく
過去と共存する術を手に入れる。

WORKS No.653