WORKS No. 889 闇から闇へ渡る者の掟

WORKS No. 889 闇から闇へ渡る者の掟

WORKS NO. 889 『闇から闇へ渡る者の掟』

光の世界には、法律がある。
しかし、怪物や殺し屋たちが生きる闇の世界にも、決して破ってはならない掟がある。
第一の掟は、力を見せびらかさないこと。
本当に強い者は、必要もないのに刃を抜かない。恐怖で相手を支配すれば、いつか自分も、より大きな恐怖に支配されると知っているからだ。
第二の掟は、仲間を道具にしないこと。
闇では、昨日の味方が今日の敵になる。だからこそ、利用するだけの関係は長く続かない。利益によって結ばれた者は、より大きな利益のために簡単に裏切る。最後まで背中を預けられるのは、損得を越えて守り合った者だけである。
第三の掟は、弱者をいたぶらないこと。
抵抗できない者を傷つける行為は、強さの証明ではない。それは、自分の弱さを隠すための卑怯な演出にすぎない。真の強者が刃を向けるのは、さらに強大な脅威から誰かを守るときだけだ。
第四の掟は、受けた依頼よりも、自分の良心を上に置くこと。
命令に従うだけなら、怪物にも機械にもできる。しかし、その命令が正しいかを考え、間違っているなら拒む。それが、自分の魂を失わないための最後の防壁となる。
そして、最も重要な掟がある。
「闇から闇へ移るとき、憎しみを持ち込んではならない」
憎しみを次の場所へ運べば、過去の傷は新しい争いとなり、復讐は別の復讐を生む。自分を傷つけた者と同じ方法を選んだ瞬間、その人間もまた、自らが憎んだ怪物へと変わってしまう。
闇に生まれたことは、罪ではない。
傷を負い、優しい生き方を知らずに育ったことも、恥ではない。
だが、その痛みを理由に誰かを傷つけるか、それとも自分のところで連鎖を止めるかは、自分で選ばなければならない。
闇を知る者にしか守れない光がある。
悪意の正体を知り、裏切りの痛みを知り、孤独の寒さを知る者だからこそ、誰かを同じ場所へ落とさずに済む。
闇から闇へ渡る本当のルールとは、より残酷になることではない。
どれほど深い闇を歩いても、自分まで闇そのものにならないこと。
刃を持ちながら、使わない強さを持つこと。
怪物と呼ばれながらも、人間らしい心を手放さないこと。
それこそが、闇の世界で最後まで生き残る者だけが知る、最も厳しく、最も尊い掟なのである。

WORKS No.889