WORKS No. 838 銃口に囲まれた母の愛

WORKS No. 838 銃口に囲まれた母の愛

WORKS NO. 838 銃口に囲まれた母の愛

戦争は、平和を守るため、正義を貫くためという言葉を掲げて始まる。しかし、その背後では権力や領土、資源、武器、経済をめぐる利権が複雑に絡み合い、人々の恐怖や怒りさえ利用されていく。掲げられた大義が正しく見えるほど、その陰に隠された目的を見抜くことは難しい。正義という言葉が利権を覆い隠す仮面になった時、命は守る対象ではなく、目的を達成するための数字へと変えられてしまう。
正義は、一方の立場だけで決められるものではない。それぞれの側に歴史があり、悲しみがあり、自分たちこそ正しいという理由がある。だが、どれほど立派な理由を並べても、子どもの命より重い利益は存在しない。正義を量る天秤に、権力や富を載せてはならない。最も弱い人の命と暮らしが守られているか、その基準で判断されるべきである。
平和とは、ただ戦闘がない状態ではない。恐怖によって沈黙させられず、食べるものや住む場所を奪われず、家族が明日も共に生きられると信じられる社会である。その平和を守るには、力の均衡だけに頼るのではなく、対話、外交、公正な分配、情報公開、独立した監視によって、利権が争いを生み出す仕組みを断たなければならない。
無数の銃口に囲まれても、母の腕は子どもを離さない。その姿が守ろうとしているのは、思想でも領土でも名誉でもなく、ただ一つの命である。戦争と平和の狭間で正義を問うなら、最後に天秤へ載せるべきものは、人間の尊厳である。母の愛が守ろうとする命を踏みにじる正義は、どれほど美しい言葉で飾られていても、本当の正義ではない。

WORKS No.838