WORKS NO. 638 空っぽと渇き
空の庫を
開けて思い出す
あの頃を
都会の夜は
喉ばかり渇く
空っぽの冷蔵庫を開けた瞬間、ただ「何もない」という事実以上のものが、胸の奥に広がっていく。
そこには、満たされていた時間の記憶や、誰かと分け合った食卓の気配が、静かに残っている。
都会の暮らしは便利で、何でもすぐに手に入るはずなのに、なぜか満たされない感覚がつきまとう。
忙しさに紛れて、何かを得ているようで、何かを置き去りにしている。
冷蔵庫の中身が空であることよりも、思い出が浮かんでしまうことの方が、よほど強く心に残る。
そしてその余韻は、言葉にならないまま、ただ乾いた感覚として喉に残る。
都会の夜は、光に溢れているのに、どこか渇いている。
それは水分では満たせない、内側からくる静かな欠落なのかもしれない。
WORKS No.638

