WORKS No. 470 欲と意地から降りられない

WORKS No. 470 欲と意地から降りられない

WORKS NO. 470 欲と意地から降りられない

欲の波
意地の鎧を
脱げぬまま
沈むと知りつつ
岸を見ている

欲と意地から降りられない状態は、
弱さではなく人間の自然な心理反応でもある。
人は損失を恐れ、過去の選択を正当化し、
「ここまで来たのだから」と引き返す機会を失う。
心理学ではこれをサンクコスト効果と呼び、
合理的判断を鈍らせる代表的な要因とされる。
現実社会では、仕事、投資、人間関係、
立場や名誉、上の評価に至るまで、
「引けない意地」が判断を固定する場面は多い。
欲は前進の燃料にもなるが、
意地と結びつくと方向修正を拒む力に変わる。
結果として、本来小さく済んだ損失が拡大し、
選択肢は静かに減っていく。
理論的に重要なのは、
「続ける勇気」と同じだけ
「降りる勇気」にも価値があるという認識だ。
撤退は敗北ではなく、
資源と時間を再配分する戦略である。
自己否定ではなく、自己保存の知恵に近い。
教訓は明確だ。
欲を持つことは悪ではない。
意地を持つことも誇りになり得る。
だが、舵を握るのは常に現在の自分でなければならない。
過去の投資や他人の視線に操縦を委ねた瞬間、
選択は自分のものではなくなる。
降りる決断は、失う行為ではない。
進む方向を取り戻す行為である。

WORKS No.470