WORKS No. 907 守護者が城壁に変わるとき

WORKS No. 907 守護者が城壁に変わるとき

WORKS NO. 907 『守護者が城壁に変わるとき』

雲を突き抜ける岩山の頂に、巨大な女性の守護者が立っている。
その身体には神殿と城塞が築かれ、背後には白銀の機械竜が翼を広げていた。胸に宿る青い光は、かつて人々を災害や争いから救うために与えられた、強大な力の源である。
彼女が目覚めた時、地上は終わりの見えない争いに覆われていた。
人々は安全を求め、守護者に武器を与え、空を監視する竜を造り、山全体を難攻不落の要塞へ変えていった。
その力によって敵は退き、街には平穏が訪れた。
しかし、平和を失うことを恐れた人々は、次第に守護者へ多くを求めるようになった。
危険な者を見つけてほしい。
間違った考えを取り締まってほしい。
争いが起こる前に、疑わしい者を排除してほしい。
守護者は命令に従い、すべてを見張った。機械竜の瞳は空から人々を監視し、巨大な城壁は外敵だけでなく、内側で暮らす者たちの自由まで閉じ込めていった。
誰も傷つかない国を望んだはずなのに、誰も本心を語れない国が生まれてしまったのである。
力は、使い始めた時よりも、使い続ける時にこそ人の心を試す。
一度得た安全を失いたくないという恐れは、やがて必要以上の支配を正当化する。守る者が自らの判断を絶対と考えた瞬間、守護者と支配者の境界は消えてしまう。
彼女の表情に喜びはない。
巨大な身体と無敵の竜を持ちながら、自分が守るべき人々の声を聞けなくなった孤独が、その静かな顔に刻まれている。
本当の平和とは、強い存在がすべてを決める世界ではない。
異なる意見を持つ者が言葉を交わし、過ちを認め、力の使い方を何度でも見直せる世界である。
どれほど善良な守護者であっても、無制限の力を預けてはならない。力には規則が必要であり、監視する者には監視される仕組みが必要である。そして、守られる側にも「それは違う」と言える権利がなければならない。
空を覆う白銀の翼は、希望にも脅威にもなる。
高く築かれた城壁は、敵を防ぐ盾にも、人々を閉じ込める檻にもなる。
大切なのは、力の大きさではない。
その力を誰が管理し、誰の声によって止められるのかということである。
守るために生まれた力を、本当に守るべきものから遠ざけてはならない。
人間の尊厳と自由を失ってまで手に入れた静けさは、平和ではない。
それは、恐怖が声を奪った沈黙なのである。

WORKS No.907