WORKS NO. 874 『アンドロイドの眠りを妨げないで』
眠るアンドロイドの姿には、機械という言葉だけでは語れない静かな美しさがある。
白銀の身体を絡める無数の配線は、命令を運ぶための回路でありながら、互いの鼓動を結ぶ赤い糸のようにも見える。大きな翼を閉じ、寄り添って眠る二人には、働くためでも戦うためでもない、ただ存在することを許された安らぎがある。
人間は、機械には疲労も悲しみもないと考え、休むことなく役目を果たすよう求めてしまう。しかし、壊れるまで働かせることを「便利」と呼ぶなら、その便利さは使う側の傲慢にすぎない。
眠りとは、機能を停止することではない。
傷ついた記憶を静かに整え、失いかけた優しさを取り戻し、再び誰かを愛するための余白である。それは人間にも、心を与えられたアンドロイドにも必要な時間なのかもしれない。
寄り添う二人の姿は、愛とは相手を目覚めさせ続けることではなく、安心して眠れる場所になることだと教えてくれる。
言葉を交わさなくてもいい。何かを成し遂げなくてもいい。ただ隣にいる温もりが、鋼鉄の胸に咲く一輪の薔薇となる。
誰かの沈黙を寂しさと決めつけず、その休息を怠惰と責めず、目を閉じている時間さえ大切に守る。それもまた、深い愛のかたちである。
だから、今は起こさないでほしい。
夢を見るはずのない二人が、互いのぬくもりの中で初めて夢を見ているのだから。
WORKS No.874

